ビリヤード

20歳の頃はやたらバイト先の先輩に遊びに連れて行かれた。

その人はボーリングとダーツとビリヤードが得意で、コーヒーが大好きだった。一応大学生だった俺は先輩どころか同級生にも遊びに行くような友達がいなかったので、当時遊び方を教えてくれたのは殆どこの人だった。遊びと言ってもお酒・ギャンブル・風俗からは縁遠く、最終的には何故かずっとビリヤードを教えてくれた。ビリヤードだけで(強制的に)オールすることもあった。

プロでもない学生が後輩にビリヤードを基礎から教えるという発想は多少ユニークに感じるが、今でこそ真っ当かもしれないと思うようなことがあった。

先日、飲み会の二次会でダーツとビリヤードを久々にやったが全員がほぼ未経験だった。自分もあまり上手ではないが、正直経験がない人がやるには絶妙に難しくて楽しみにくい競技だと思う。何とか楽しんで貰いたいと程よい玄人感と素人感とほんの少しのピエロを演出して盛り上げようと試みたが、盛り上がった一次会と比べるとギリギリ盛り下がってしまった。自分も苦手な分野において痛感するが、できないもの・或いはレベル差がありすぎると場は盛り上がりにくい。そこでその先輩のことを思い出し、自分と対等以上のレベルで遊んでくれる人を求めていたんだなと理解した。飲み会や二次会を楽しむという点ではノリが一番大事だとは思うが。

ただちょっと、或いは本格的にダーツ・ビリヤードが好きな人からすればライバルがいるのは非常にありがたい。一人でも楽しめなくはない競技だがやはり人と競るのが楽しい競技でもある。ダーツは何故か最初からそこそこ人に勝てたので、調子に乗ってマイダーツを買って一人で投げに行くこともあった。けれども一人で投げると相手が自分の記録だけになってしまう。すると明確なスコアアップだけが目標になり、楽しさよりもスコア更新の失敗経験や歯痒さの方が強まってしまう現象が起きてしまうので近年はすっかり通わなくなってしまった。ビリヤードにハマっていたとしても似たような結果になっていたと思う。プロを目指す気はないのでどこかで実力は止まる。その上で競技を楽しむには似たレベルの人と勝負するのが一番楽しいのかもしれない。というところで、ちょっと変わった先輩だったけど根気強く後輩を育てようとする姿勢は憎めないなと今では思う。

余談だが、先輩は最初一通り(ボウリング、ダーツ、コーヒー、ビリヤード)連れて行ってくれた。ボウリングは余りに上達せず、ダーツは何故か直ぐにそこそこ勝つようになってしまい(ほぼ運)、コーヒーは何を飲んでも一向に美味しさが分からず、ビリヤードは普通に下手だったけど、強いて言えばビリヤードが一番お互いが楽しめるものだと思ってくれたのだと思う。もうあまりやらないけど年に一回くらいはやりたい。

コーヒーは未だに飲めない。